むちうちと後遺障害12級
1 むちうち損傷
むちうち損傷とは,交通事故等において頭部への慣性外力による頚部の連続的な過伸展と過屈曲を伴うむちうち運動のために生じる特殊な損傷を意味しています。
臨床上は,頚椎捻挫,頚部捻挫,外傷性頚部症候群,外傷性頭頚部症候群などという診断名がつけられています。
発生原因としては,頭部の急激な後屈を止めるために後頚部の筋群が反射的に過緊張・収縮したり,後頭部や頚部をヘッドレストレイントで打撲したときなどに軽微な筋断裂や小出血が発生することの方が多いようです。
このように,むちうち損傷の大部分は頚部軟組織の局所的かつ軽微な損傷であることから,一般的な捻挫と同様に,初期治療を怠らなければ症状は次第に軽快するのが通常です。
もっとも,椎間板損傷,神経根症状,バレリュウ症状や脊髄症状が受傷後に出現したような場合,重篤な症状が後遺障害として残存する可能性があります。
また,既存病変としての頸椎症が症状の遷延・慢性化に関与することもあります。
2 むちうちに関する後遺障害等級
こうしたむちうちに伴う症状が後遺障害として等級認定される場合には、主に二通りあります。
ひとつは、「局部に神経症状を残すもの」という14級9号、もうひとつは、「局部に頑固な神経症状を残すもの」という12級13号です。
このうち,12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」については,画像診断や平衡機能検査などの他覚的検査によって医学的に症状を説明できる異常所見が明らかに認められるものであることが必要とされています。
したがって,画像所見によって医学的に症状を説明することができず,医師の作成した後遺障害診断書に疼痛症状の合理的な説明がない場合,後遺障害12級13号の認定は困難であるということになります。