むちうちにおける労働能力喪失率について
1 むちうちと労働能力喪失率
後遺障害は、症状固定(治療を継続しても治療効果が上がらず、症状が改善しない状態。)の後、後遺障害別等級表記載の事由に該当するとされたものをいいます。
そして、各等級に応じて、所定の労働能力喪失率が決められています。
むちうちが後遺障害等級に該当する場合、一般的には、14級9号(局部に神経症状(注:痛みやしびれなど)を残すもの)、12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)のいずれかに当たるとされることが一般的です。
そして、後遺障害等級14級の場合の労働能力喪失率は5パーセント、12級の場合は14パーセントと定められています。
2 労働能力喪失率の考え方
厳密に考えれば、上記の労働能力喪失率について、個人差があるのではないかとも思われるところですが、被害者間の公平を保つため、原則として、各障害等級における労働能力喪失率について個人差をもうけることはありません。
そして、後遺障害による損害のうち、逸失利益(後遺障害が生じたことによる経済的な損失)については、被害者の年収に、上記の労働能力喪失率を乗じた金額を基礎として算定されるのが一般的です。
もっとも、被害者の職種や業務内容によっては、神経症状(痛みなど)のみでは、減収が生じない場合があります(固定給であり、デスクワークなどの軽作業を中心とする職種など)。
損害賠償の前提として、損害の発生が不可欠である以上、その後遺障害の程度が小さく、被害者が従事する職業の性質等からみて、将来における収入の減少が生じるものとは認められないときは、逸失利益の発生を認めることはできないと考えられます。
しかしながら、事故によって実際の労働能力が低下しているにもかかわらず、被害者に減収が生じていない理由について、被害者の不断の努力や使用者の温情等がその理由であり、長期間その状況が継続できるのか定かではないことなどが立証された場合には、労働能力の喪失を一定の範囲で認定し、後遺障害による逸失利益の発生を認めることができるとする見解や、これに従った裁判例があります。
3 弁護士に相談
上記のとおり、逸失利益の範囲については、様々な要素を検討する必要がありますので、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。